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  • かつてダイヤモンド市場を独占したデビアス社 | 独占崩壊による市場への影響は?


    category: その他豆知識

    最終更新日 : 2025年12月01日
    投稿日 : 2025年12月01日


    「ダイヤモンドは永遠の輝き」。この世界で最も有名なキャッチコピーが、たった一社の戦略によって生み出されたものだとご存知でしょうか?

    かつて世界のダイヤモンド原石の約8〜9割を支配し、価格を意のままにコントロールしていた絶対王者、それが「デビアス社」です。しかし現在、その圧倒的な独占体制は崩壊し、ダイヤモンド市場は大きな転換期を迎えています。

    この記事では、デビアス社がいかにして市場を独占し、なぜその支配が終わったのか、そしてこれからのダイヤモンドの価値はどう決まるのかを徹底解説します。

    デビアス社について知りたい方や、デビアス社の影響力が薄れた今、今後のダイヤモンドがどうなっていくのか知りたい方は、ぜひ最後までご覧下さい。

    かつてダイヤモンド市場の約8〜9割を支配したデビアス社とは


    南アフリカに本拠を置くデビアス社は、かつて世界のダイヤモンド原石市場の約8〜9割を占めたを支配し、価格決定権を握っていた巨大企業です。

    1888年の創業以来、デビアス社はダイヤモンドの採掘から流通、販売に至るまでの全工程を管理する「カルテル(企業連合)」を形成しました。

    これにより、ダイヤモンドは単なる鉱物ではなく、価値が安定した高級品としての地位を確立したのです。

    デビアス社の歴史は、まさにダイヤモンド業界そのものの歴史といっても過言ではありません。

    なぜデビアス社がダイヤモンド市場を独占できたのか

    デビアス社が長きにわたりダイヤモンド市場を独占できたのには、以下のような緻密で徹底的な戦略がありました。

    • 世界の主要鉱山を買収・合併して押さえた
    • 全世界の原石を一括管理した
    • 買収や同盟によって新規参入を阻んだ
    • 「ダイヤモンドは永遠の輝き」というマーケティング戦略が大成功した
    • 原石の放出量を調整し価格を維持した

    詳しく解説します。

    世界の主要鉱山を買収・合併して押さえた

    デビアス社設立の中心人物であるセシル・ローズは、南アフリカで有望なダイヤモンド鉱山が見つかると、次々と買収・合併を繰り返しました。

    当時のダイヤモンドラッシュで乱立していた小規模な採掘業者を統合。結果、巨大な資本力で主要な鉱山の権利を独占したのです。

    これにより、ダイヤモンドの供給源そのものをデビアス社が握る構造が完成しました。他社が入り込む余地をなくすことで、市場への供給量を自社の意のままに操る土台を築いたのです。

    全世界の原石を一括管理した

    デビアス社が管理したダイヤモンドは、自社で採掘したものだけではありません。他社が採掘した原石もすべて買い上げる契約を結んだのです。

    そして、ロンドンに設立した中央販売機構に世界中の原石を集め、選別・販売を一元管理するシステムを作り上げました。サイトホルダーと呼ばれる限られた研磨業者だけに原石を販売する仕組みによって、デビアス社を通さなければダイヤモンドを入手できない状況を作り出したのです。

    買収や同盟によって新規参入を阻んだ

    デビアス社の支配体制を脅かすような新たな鉱山が発見された場合、彼らは手段を選ばずに対応しました。豊富な資金力でその鉱山を運営する会社ごと買収したり、強力なカルテルへの参加を促して同盟を結んだりしたのです。

    またそれに従わない場合は、大量の在庫を一気に放出して価格を調整し、競合に不利な状況を生み出したと批判されることもありました。

    「ダイヤモンドは永遠の輝き」というマーケティング戦略が大成功した

    供給だけでなく、需要をコントロールしたこともデビアス社の大きな功績です。

    1947年に打ち出したキャッチコピー「A Diamond is Forever(ダイヤモンドは永遠の輝き)」は、20世紀最高のマーケティングといわれています。

    それまで婚約指輪の習慣がなかった日本やその他の国々に対し、映画や広告を通じて「婚約指輪=給料の3ヶ月分=ダイヤモンド」というイメージを植え付けました。

    この戦略により、ダイヤモンドは愛の証として不可欠な存在となり、世界中で爆発的な需要を生み出しました。

    原石の放出量を調整し価格を維持した

    デビアス社の独占による最大の目的は、ダイヤモンドの価格を高く安定させることでした。

    景気の悪化によりダイヤモンドの需要が落ち込んだときは、CSOからの原石の供給量を絞って価格の下落を防ぎました。逆に需要が高まれば、在庫を放出して利益を得たのです。

    市場の需給バランスをようにコントロールすることで、ダイヤモンドの価格が暴落するのを防ぐ。これが、「ダイヤモンドは価値が変わらない資産」という信頼を築き上げた理由です。

    デビアス社の独占体制が崩壊した5つの理由

    約100年もの間、世界のダイヤモンド市場をほぼ独占し、価格をコントロールし続けてきたデビアス社。ですが、20世紀後半から21世紀にかけて、その絶対的な支配体制は徐々に崩れていきました。

    かつては市場の約8〜9割を握っていた世界シェアも、現在では2割前後にまで低下したとされています。なぜ、デビアス社の独占体制が崩れたのか、以下5つの理由を解説します。

    • ロシアや豪州が独自に原石を販売するようになったため
    • 各国の独占禁止法がデビアス社の支配力を弱めたため
    • 人工ダイヤ(ラボグロウン)の普及で希少性が揺らいだため
    • デビアス社の在庫買い支えモデルが限界を迎えたため
    • アフリカ各国がダイヤを自国主導で販売し始めたため

    詳しく見ていきましょう。

    ロシアや豪州が独自に原石を販売するようになったため

    デビアス社の支配が崩れる最初のきっかけとなったのは、新たなダイヤモンド産出国が独自の販売ルートを開拓し始めたことです。

    1990年代、オーストラリアのアーガイル鉱山を所有するリオ・ティント社や、ロシアの国営企業アルロサなどが、CSOを通さずに自ら採掘したダイヤモンドを直接市場へ販売し始めました。これにより、デビアス社を経由しない大量のダイヤモンドが市場に流通することになったのです。

    よって、供給を一元管理していたデビアス社の影響力は薄れていきました。

    各国の独占禁止法がデビアス社の支配力を弱めたため

    世界各国で強化された独占禁止法も、デビアス社のビジネスモデルに大きな打撃を与えました。

    とくにアメリカやEUは、デビアス社による市場独占や価格操作を問題視し、厳しい規制や訴訟をおこないました。

    これを受けてデビアス社は、2000年代初頭に独占的な商慣習を見直します。従来の「供給調整による価格維持」から「需要喚起によるブランド戦略」へとビジネスモデルの転換を余儀なくされました。

    法的な圧力が、デビアス社のカルテルによる支配を不可能にしたのです。

    人工ダイヤ(ラボグロウン)の普及で希少性が揺らいだため

    近年急速に普及している「ラボグロウンダイヤモンド(人工ダイヤモンド)」の存在も、デビアス社の支配体制を揺るがす大きな要因です。

    かつては工業用が主だった人工ダイヤですが、技術の進歩により、天然ダイヤと科学的性質がほぼ同一で、外観も極めて似た高品質なダイヤが安価で製造可能になりました。結果、「ダイヤモンドは天然でなければ価値がない」というこれまでの常識が覆されたのです。

    消費者の選択肢が増えたことで、天然ダイヤの供給量だけをコントロールしても、市場全体の価格を維持することが難しくなります。

    デビアス社の在庫買い支えモデルが限界を迎えたため

    デビアス社は長年、市場価格が下落しそうになると自社資金で大量の在庫を買い支えることで価格を維持してきました。しかしこのモデルは、莫大な資金力を必要とします。

    1990年代以降、新たな鉱山の発見や独自販売ルートの増加により、市場に流通するダイヤモンドの量が激増しました。そのすべてをデビアス社一社で買い支えることは資金的に不可能となり、在庫調整による価格コントロール機能が麻痺してしまったのです。

    結果として、デビアス社は市場シェアの維持よりも、自社の収益性を重視する方針へと転換せざるを得なくなりました。

    アフリカ各国がダイヤを自国主導で販売し始めたため

    ボツワナやナミビアといった主要なダイヤモンド産出国が、自国の資源に対する権利を主張し始めたことも大きな変化です。

    アフリカ諸国は、単に原石をデビアス社に輸出するだけでなく、自国内で研磨加工や販売をおこなうようになりました。より多くの利益を国に残すためです。

    デビアス社もこれに応じ、現地政府との合弁会社を設立するなど協力体制をとっていますが、これはかつてのようにロンドンの一箇所で全ての原石を管理することができなくなったことを意味しています。

    デビアス社の影響力低下でダイヤの価値はどうなるのか?


    デビアス社の独占体制が崩壊したことで、気になるのは「ダイヤモンドの価値が今後どうなるのか」という点ではないでしょうか。

    ここでは、デビアス社の影響力が低下した現代において、ダイヤモンドの価格がどのように決まり、今後どのような価値を持っていくのかについて解説します。

    現在のダイヤ価格を形成している新たな市場メカニズム

    現在のダイヤモンド価格は、かつてのような人為的なコントロールではなく、純粋な「需要と供給のバランス」によって決まる市場メカニズムへと移行しています。複数の生産者が競争しながら供給をおこない、世界経済の状況や宝飾品への需要に応じて価格が変動する、より透明性の高い市場になりました。

    価格は以前よりも変動しやすくなりましたが、市場原理に基づいた適正な価格が形成されるようになったともいえます。

    天然ダイヤの資産価値は今後どうなるのか

    デビアス社の後ろ盾がなくなったとしても、天然ダイヤモンドの資産価値が暴落する可能性は低いと考えられています。なぜなら、天然ダイヤモンド自体の希少性は変わらないからです。

    主要な鉱山の枯渇が進み、新たな鉱山の発見が難しくなっているため、天然ダイヤの供給量は長期的には減少傾向にあります。一方で、新興国を中心とした需要は底堅いため、希少な天然資源としての価値は、今後も維持、あるいは上昇していくと予測されています。

    現代のデビアス社はどのように評価されているのか

    独占企業としての地位を失ったデビアス社ですが、現在でもダイヤモンド業界のリーダーであることに変わりはありません。

    現在は、自社ブランド「フォーエバーマーク」の展開や、トレーサビリティ(追跡可能性)の確保、倫理的な採掘の推進など、ダイヤモンドの「質」と「信頼」を保証するトップブランドとして高く評価されています。

    また、デビアス社も 低価格帯を中心としたラボグロウン事業に参入しており、天然ダイヤとは明確に区別した市場戦略を採用しています。

    まとめ

    かつて市場を独占し、ダイヤモンドの価値そのものを創造してきたデビアス社の時代は、一つの区切りを迎えました。しかし、決して「ダイヤモンドの価値がなくなる」ことを意味しません。

    むしろ、人為的な価格操作から離れ、需要と供給という健全な市場原理によって、天然ダイヤモンドの「真の希少性」が正当に評価される時代になったといえるでしょう。

    人工ダイヤの台頭など変化はありますが、地球が長い時間をかけて育んだ天然の輝きは、これからも唯一無二の資産です。これからはブランドの神話に惑わされず、品質や希少性という本質的な価値を見極め、ダイヤモンドと賢く付き合っていきましょう。

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    監修:井上 男(だん)

    金や貴金属・ブランド品をはじめ幅広いジャンルを取り扱う「質屋CLOAK」の代表。1977年7月生まれ。
    査定歴は25年以上で、年間10,000点ほどの商品を査定。長年培ってきた経験やスキル・最新相場の把握によって、お客様のご希望に寄り添った高額査定を実現中。

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