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category: 貴金属についての豆知識
最終更新日 : 2025年09月01日
投稿日 : 2025年09月01日

プラチナの将来価値を予測するうえで、最も重要な鍵を握るのが「需要」の動向です。
プラチナの価値は、その多くが産業用としての需要に支えられています。EVシフトという逆風と、水素社会の実現という追い風。この二つの巨大なトレンドの中で、プラチナ需要は今後どう変化していくのでしょうか。
そこでこの記事では、以下の内容を解説しています。
この記事を読むことで、プラチナの需要はどこにあるのか、プラチナの価値を左右しているものは何か、金との価格差がなぜ生まれているのかがわかります。
記事の後半では、今後プラチナの価値がどう変化していくのかの予測もしていますので、プラチナへの投資を検討中の方や、今後プラチナを売却したいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

現在のプラチナ需要は、以下三本の柱によって支えられています。
プラチナの価格動向を理解するためには、これら3つの分野がそれぞれどのような状況にあり、今後どう変化していくのかを把握するのが不可欠です。
それぞれ解説していきます。
プラチナ需要の中で最も大きな割合(全体の約6割)を占めるのが、自動車の排ガスに含まれる有害物質を無害化する「触媒」としての役割です。
プラチナは、排ガス中の窒素酸化物などを効率的に浄化する非常に優れた性能を持っています。そのため、世界中で強化される環境規制に対応するため、自動車メーカーにとって不可欠な素材となっています。この触媒としての需要が、プラチナ価格の根幹を支えている最大の要因です。
プラチナの自動車触媒としての需要を、以下3つの観点から解説します。
詳しく見ていきましょう。
プラチナは主にディーゼル車の触媒として知られていますが、近年ではガソリン車での需要も増加傾向にあります。これは、これまでガソリン車の触媒として主流だったパラジウムの価格が、プラチナより大幅に高騰したためです。
自動車メーカーはコスト削減のため、より安価なプラチナをパラジウムの代替として利用する技術開発を進めています。この動きが、ディーゼル車需要の減少を一部補う形で、プラチナの下支え要因となっています。
自動車の触媒としての需要が大きいプラチナですが、EV(電気自動車)の普及によりその需要が減少しています。
ですが、EVの普及に伴いプラチナの需要が完全になくなるわけではありません。なぜなら、同じ電動車でもHV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)にはガソリンエンジンが搭載されており、触媒が必要だからです。
また、後述するFCV(燃料電池自動車)の普及が期待されるため、自動車業界全体として見れば、プラチナの役割が「排ガス浄化」から「エネルギー生成」へと変化していく可能性があります。
プラチナは、水素と酸素を化学反応させて電気を生み出す燃料電池の電極触媒として、現時点で最も効率的な物質です。そのため、究極のエコカーと呼ばれるFCV(燃料電池自動車)が普及すれば、プラチナの新たな巨大需要が生まれると期待されています。
一台あたりに使用されるプラチナの量はガソリン車よりも多くなるとも言われており、FCVの普及スピードは、プラチナの長期的な価格を左右する最大の鍵となるでしょう。
自動車触媒以外の工業用需要も、プラチナの価値を支える重要な柱です。プラチナの優れた耐熱性・耐食性・化学的安定性を活かし、最先端技術分野で幅広く利用されています。
たとえば、パソコンやデータセンターで使われるハードディスクの記録密度を高めるために不可欠な素材です。また、体内で変質しない特性から、カテーテルやペースメーカーといった医療機器の部品にも活用されています。
さらに、化学産業ではシリコーンや肥料を製造する際の触媒として重要な役割を果たしており、現代社会を支える縁の下の力持ちといえる金属です。
プラチナの需要は、工業的なものだけではありません。私たちが普段身につけているジュエリーにも、プラチナは使われています。プラチナの希少性と美しい白い輝き、そして変質・変色しにくい化学的な安定性が、宝飾品として人気が高い理由です。
とくに、ダイヤモンドの輝きを最も引き立てる金属として、婚約指輪や結婚指輪の素材として世界中で愛用されています。
近年、金の価格が歴史的な高水準で推移しているため、宝飾品市場では金よりも割安なプラチナが代替品として選ばれるケースが増えています。
とくに、白い輝きを持つ金属として比較されるホワイトゴールドよりも、プラチナの方が素材本来の色であり、アレルギーのリスクも低いことから、改めてその価値が見直されているのです。
消費者は、限られた予算の中でより満足度の高いジュエリーを求めるため、金ではなくプラチナが選ばれる傾向は今後も続くと考えられます。
宝飾品としてのプラチナ需要は、巨大市場である中国とインドの動向に大きく影響されます。
かつて世界のプラチナジュエリー需要の半分以上を占めていた中国では、経済の減速や若い世代の価値観の変化により、需要は減少傾向にあります。一方で、伝統的に金を好むインドでは、若い世代を中心にプラチナの人気が徐々に高まっているのです。
今後の宝飾品需要は、このインド市場がどれだけ成長するかが一つの焦点となっています。

現在のプラチナは、自動車のEVシフトという逆風に晒されています。ですがその一方で、「水素社会の実現」という、これまでの需要を覆すほどの巨大な潜在需要を秘めており、将来性が注目されています。
今後のプラチナの需要について、以下2つの観点から解説していきます。
それぞれ解説します。
プラチナは、次世代エネルギー「グリーン水素」を「作る」際と「使う」際の両方で、現時点で最も効率的な触媒として不可欠な役割を担います。
グリーン水素を製造する主要な装置(PEM型水電解装置)では、プラチナに勝る触媒は見つかっていません。また、その水素で発電する燃料電池(FCVなど)でも中心的な役割を果たします。
そのため、将来的に水素社会が実現すれば、プラチナの需要は現在の自動車触媒の規模をはるかに超え、その価値が大きく見直される可能性を秘めているのです。
プラチナは、工業用需要だけでなく、金や銀と同様に「投資対象」としての側面も持っています。
プラチナ地金の購入や、プラチナETF(上場投資信託)などを通じて、個人投資家もその価値に投資することが可能です。
現在のプラチナの価格は、金に比べて割安な水準にあるため、将来の価格上昇を期待した長期的な投資対象として一部の投資家から注目を集めています。価格変動が大きい分、高いリターンを狙えるのが魅力です。
歴史的にプラチナは金よりも高価な貴金属でしたが、現在はその価格関係が逆転しています。この金に対する割安感から、プラチナを選ぶ投資家が増えているのです。
事実、2025年8月現在、金価格が1gあたり17,000円台後半で推移する一方、プラチナ価格は7,000円台前半と、金がプラチナの2倍以上という大きな価格差が生じています。
このような歴史的に見ても著しい価格差は、将来的な価格差の縮小(プラチナ価格の上昇)を期待した投資資金をプラチナ市場に呼び込む一因となっています。
プラチナは、南アフリカとロシアという特定の国に産出が偏っており、供給が非常に不安定な金属です。近年の鉱山での生産トラブルや電力問題などを背景に、プラチナは供給不足の状態が続いています。
そして、プラチナの供給不足は当面続くと予測されています。需要が供給を上回る状態が続けば、いずれ価格は上昇せざるを得ません。この需給バランスの逼迫が、将来的な価格上昇への期待を高めています。
プラチナは新たな需要への期待が寄せられていますが、現在の価格は、「安全資産」として世界的に評価される金とは大きな差があります。プラチナの価値が金よりも低い主な理由は、以下の3つです。
詳しく解説します。
プラチナ価格が金よりも不安定なのは、プラチナの需要の約6割が、自動車の排ガス浄化触媒をはじめとする「工業用」で占められているためです。
工業製品の需要は、世界経済の景気動向と密接に連動します。景気が悪化し、自動車などの生産が落ち込むと、プラチナの需要も直接的に減少するため、価格が下落しやすくなります。
景気に敏感な性質が、プラチナの価値が金の価値よりも低い大きな理由といえるでしょう。
プラチナは、金が持つ「安全資産」としての圧倒的な地位を確立できていません。
金は、世界中の中央銀行が外貨準備として保有するほどの普遍的な価値を持ち、経済危機や地政学リスクが高まると「有事の金」として投資資金が流入します。一方、プラチナにはそのような役割が期待されていません。
この投資需要の差が、とくに不安定な経済状況下で、金とプラチナの価格差を広げる大きな要因となっています。
プラチナは、年間の採掘量が金の20分の1程度と非常に希少な金属ですが、投資市場における「希少性」の考え方では逆転現象が起きています。
これは、金は採掘された分のほとんどが地上在庫として存在するのに対し、プラチナは工業用途で「消費」されてきた背景があるためです。
プラチナは市場規模も金に比べて非常に小さく、少額の投資資金の動きでも価格が大きく変動しやすくなっているのが現状です。

今後のプラチナの価値は、短期的には不安定な要素が多いものの、長期的には「水素社会」の実現という巨大な需要に支えられ、大きく価値が見直される可能性があると予測されます。
現在のプラチナ市場は、自動車業界のEVシフトという大きな逆風と、次世代エネルギーの主役という追い風がぶつかり合う、まさに過渡期にあります。そのため、見る時間軸によってその評価は大きく異なってくるのが、今のプラチナの最大の特徴といえるでしょう。
短期的から中期的なプラチナの価値は、既存の自動車触媒需要の減少と、金価格や世界経済の動向に左右され、不安定ながらも底堅く推移すると予測されます。
EVの普及による需要減は避けられないものの、ガソリン車の触媒としてパラジウムの代替需要が増加していることが、プラチナの価格を下支えしています。また、歴史的に見て金より大幅に割安な水準にあるため、一定の投資需要も見込めます。
供給不足も続いており、急落するリスクは限定的と考えられるでしょう。
長期的なプラチナの価値は、脱炭素社会に不可欠な「グリーン水素」の製造と、燃料電池(FCVなど)での利用という新たな需要に支えられ、現在の水準から大きく上昇するポテンシャルを秘めています。
水素を「作る」ときと「使う」ときの両方で、プラチナは現時点で最も効率的な触媒として必要不可欠な存在です。世界が本格的に水素エネルギー社会へ移行する場合、その需要は現在の自動車触媒の規模をはるかに超える可能性があります。これが、プラチナの将来性に対する最大の期待材料です。
この記事では、プラチナの需要構造と、その将来性について詳しく解説しました。
現在のプラチナ市場は、自動車触媒という最大の需要がEV化によって減少するリスクと、水素エネルギーという新たな巨大需要が生まれる期待とがせめぎ合う、まさに歴史的な転換期にあります。
プラチナの価格は、短期的に見ると不安定な状態が続くかもしれませんが、脱炭素社会の実現に不可欠な「キーマテリアル」としての役割を考えれば、長期的なポテンシャルは計り知れません。
今後、プラチナへの投資やプラチナの売却をお考えの方は、その需要と今後の動向についてよく理解したうえで、次の一手を決めるようにしましょう。
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監修:井上 男(だん)
金や貴金属・ブランド品をはじめ幅広いジャンルを取り扱う「質屋CLOAK」の代表。1977年7月生まれ。
査定歴は25年以上で、年間10,000点ほどの商品を査定。長年培ってきた経験やスキル・最新相場の把握によって、お客様のご希望に寄り添った高額査定を実現中。

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