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  • 質屋の歴史


    category: 質屋について

    最終更新日 : 2023年07月26日
    投稿日 : 2020年10月15日

    質屋の起源は中国

    そもそも質屋の起源はと言いますと遣唐使に遡るとされており、それを解釈すると質屋のシステムは中国から渡ってきたと考えられております。
    そして丁度この頃、日本はもとより世界中に広まっていったと言われています。

    では、質屋の商いの基礎が我が国で確認されたのはいつ頃かと言いますと、当初まだ主流であった物々交換から貨幣経済へと変わるころのこと、
    日宋貿易が活発化し、平清盛により大量に宋銭が輸入され、その流通が急速に普及する鎌倉時代になります。

    歌人である藤原定家の日記「明月記」の中で当初の質屋の呼名である「土倉」との文字が登場します。

    この文献は、治承4年(1180年)から嘉禎元年(1235年)までの56年間にわたり克明に記録した日記とされているため、
    質屋の歴史は今から約800年前ということになります。

    この文献によりますと当時の質屋は造り酒屋が兼業で行い、貨幣経済に影響を及ぼしていたとされています。

    そのため室町時代では 多くの人から恨みを買うことがあった土倉や酒屋は借金の棒引きを求める徳政一揆の襲撃を受け、
    それに対抗するため用心棒を雇ったりと自衛策を取りますが、幕府の徳政令により多くの債権を失い経営難となります 。

    その後、安土桃山時代の戦国動乱の中、幾多もの待ち受ける苦難を乗り越え、江戸時代を迎えることとなるのです。

    寛永年間では質屋の仕組み(品物を預けてお金を借り、返済期限が切れた品物は質流れ品となって売られるという現在のシステム等)の大半が確立し、
    現在の質屋営業法の基礎となる質屋取締令が1895年(明治23年3月13日)に公布されます。

    そして、それまで使われていた土倉という名称が「質屋」に改められることとなります。

    その後江戸中期、元禄時代の経済成長の最盛期を迎えると、質屋は庶民の生活の中に定着することとなります。

    さらに時は進み、享保年間には徳川吉宗が主導した財政安定策を主眼とする享保の改革により“消費は美徳なり”と言われた時代から
    “物を大切にしましょう”という節約の世へと一変し、冷え込みムードの不況時代がやってきます。

    この不況を反映してか江戸市中の質屋の件数が1500件から2700件余りに急増します。

    当時の江戸の人口が75万人といわれておりましたから単純計算で言えば、なんと江戸っ子280人に1軒の割合で質屋があったことになります。

    それを象徴するものとして「江戸名物、伊勢屋、稲荷に犬」という流行り言葉がありました。
    質屋の亭主に伊勢の出身が多く、屋号にその名を使っていたためで、質屋の代名詞でありました。

    ちなみに現在の東京の人口が1200万人としてその割合からすると質屋の軒数は4万3千軒位あってもいいわけです。

    ところが現在の東京都の質屋の軒数は約600軒です。
    ですから、当時の質屋の利用度が如何に高かったかをうかがい知る事ができます。
    きっと今の銀行ATMと同じ感覚で当時の質屋は利用されていたのかもしれません。

    この江戸期には質屋業で蓄財してから大商人になる例は多く、三井財閥の創始者・三井八郎左右衛門高利、住友、鴻池財閥の鴻池善右衛門正成や
    三越の起源である越後屋呉服店などもそうでした。

    それから明治以降、大財閥はヨーロッパの新しい金融制度を取入れ、日本国唯一の金融機関であった質屋から銀行へと業態を変え、
    明治維新を迎える明治時代末期には東京の質屋は約2000軒前後となり、小口の街質が庶民を対象とする営業を続けることとなります。

    それからさらに時は進み、昭和初期になると庶民の間の一般的な金融であった質屋は世間体が悪いとうしろめたく思われていたこともあり、
    「一六(いちろく)銀行」という愛称で呼ばれることもありました。

    さらに1970年代になると、無担保・無保証人で一般市民に融資を行う「団地金融」(消費者金融・サラ金・街金の前身)の台頭により
    廃業する質屋が多くなりました。

    そして平成を迎えることになります。

    今まで質屋は物を担保に融資する業を中心としていましたが、欧州のブランドブーム到来により、買い取りというリサイクル業務に着目し再び盛んになります。

    この質屋業が庶民金融の中で盛衰を繰返しながらも今日まで健在しているのは、原始的かつアナログ的ともいえるこのシステムの利便性が
    極めて合理的で完成されたものだからだと思います。

    これから先も庶民の生活の一部としての役目を果たすべく、社会に必要とされ続けることと思っております。

    監修:井上 男(だん)

    金や貴金属・ブランド品をはじめ幅広いジャンルを取り扱う「質屋CLOAK」の代表。1977年7月生まれ。
    査定歴は25年以上で、年間10,000点ほどの商品を査定。長年培ってきた経験やスキル・最新相場の把握によって、お客様のご希望に寄り添った高額査定を実現中。

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